11月 03

book_golf

「なぜエグゼクティブはゴルフをするのか?」(ゴマ文庫 パコ・ムーロ著 667円+税)
という本に、面白い逸話が載せられていました。
そのユニークな視点に結構感心したので、ちょっと抜粋させて頂きたいと思います。

なお、いい本なのでぜひ購入して読破してみるのをおすすめします。

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「第6話 社長のクローンは働き者ばかり!?」

これは、雇われ社長、某・ボス氏の物語。

ある日、ボスは部下たちを自分のクローンに変えようと決心した。
それまでボスは、彼らをあてにならないと思ってきたし、彼らに不愉快な思いをしてきた。
彼らの数えきれないほどの欠点も我慢してきた。
そこで、彼らを自分のクローンに変えれば、そんなこともなくなると考えたのだ。

ボスは4人の部下をフランクスト博士のところへ連れて行った。
唯一のクローン専門クリニックの院長を務めるフランクスト博士に、部下たちを変えてもらうつもりだった。

「クローン1」になるのはボスの秘書だ。
彼がクローンに変われば、優先事項をたやすく理解できるようになるはずだ。そのうえ、仕事ぶりが上がって、編集作業などもうまくこなすようになるだろう。

「クローン2」と「クローン3」は部門マネージャー。
彼らは、ボスの指令をすぐに理解できるようになるはずだ。
その指令をほかの社員に伝えるのもうまくなるだろう。

「クローン4」は、製品関連の仕事を担当するプロダクトマネージャー。
新価格を決めるのも、キャンペーンを実施したり販売戦略を立てたりするのも、楽にこなせるようになるはずだ。
なにしろ、彼らがクローンに変われば、やり方も考え方もボスと同じになるのだから。

すべてがボスの思い通りに事が運んだように見えた。
そして、ボスもクローンたちも、これまでになく完璧な環境で働きはじめた。
しかし、数週間後、クローン1がボスのところにきた。話があるという。

 

--えーとあの、僕、会社を辞めようと思います。

--おい、何を言っているんだ!この大忙しの時期に辞めるっていうのか!

--申し訳ありません。でも僕は、ここでの仕事に将来性を感じないのです。地位だって期待していたほど高くない。僕は志を高く持っています。成長したいと思うのですが、ここでは無理なのです。

クローン1にしてみれば、「完璧に正装したのに行くところがない」ようなものだった。
彼のクローンをこの程度の地位に配属するのは、明らかに間違いだった。
もっと早くこれに気付くべきだった。
もし社員全員が、指導力と野心を兼ね備えた優秀な起業家だとしたら、簡単な作業をする役がだれもいなくなってしまう。
ボスは、クローン1になんとかもう数日残ってもらい、その間に問題の解決をはかることにした。

 

クローン2がカンカンに怒って、ボスを呼びつけた。

--今のままではとてもやってられません。いいですか、社長が決意を新たにするか、私が会社を辞めるかのどちらかです。もううんざりなんです。社長はある日、私にひと言話しました。すると次の日も同じことを言いました。そしてまた次の日も・・・。
社長が私をもっと気にかけ、私のために時間を割く気がないなら、もう私をあてにしないで下さい。わたしは人から邪険に扱われるのはいやなんです。社長は管理が行き届いていません。

当然のことであるが、彼は手ごわい。
ボスが決めたことでも、あまりよく練られていないものは受け入れようとはしなかった。
ここのところ上層部があれこれ押しつけてきたので、ボスは部下とのコミュニケーションを欠いたまま、たくさんの決定を下してしまった。
クローン2は、以前の彼ほど扱いやすくはなかった。
今の彼は反抗的だし、気難しい。以前の彼は素直な性格で、日々の状況の変化に対応することの難しさをもっとよく理解できた。

 

クローン3もほどなく不満を抱え、ボスに申し立てた。

-- あのですね、私はこんなに問題を抱えているんです。でも社長からは何の回答もありません。私の方は自分がすべきことはすべてやっていますが、適切な解決法 を指示してもらわなければ、とても問題を解決できません。問題が多いからと言って、社長は私たちに文句は言えません。社長が私たちに手を貸さないのですか ら。こんな状態が続くなら、私は会社を辞めます。

ボスは意気消沈した。
新しい部下たちは、彼が間違いを犯す余地を与えてくれない。
彼らは反抗的で、何か問題を見つけてはすぐ口答えする。
以前の部門マネージャーたちは、頭はそれほど切れなかったが、なんとか解決法を提案するぐらいはできたし、失敗はあったが、自分たちで問題に対処していた。
クローンたちは妥協しないし、彼らのほうが正しいこともある。
だが、彼らは否定的、批判的な見方ばかりしているから、本質を見誤っている。

 

クローン4は手に負えなくなりつつあった。

頑固者の彼が、ボスと実行計画を話し合うと、話し合いというより二人はいつもけんかをしているように見えた。
彼は決してアドバイスを受け入れず、なにがなんでも自分の考えを押し通そうとした。
ボスは彼の態度のことで真剣に悩みはじめた。
はっきりした考えを持つことと、考えを変えないことは同じではない。
しまいには、クローン4はこう言ってボスを仰天させた。

--社長は自分がやりたいことはなんでもできるでしょうが、この新製品を売り出すにはこの方法しかありません。社長はいつも自分が正しいと思い込んでいるので、社長にものを言う社員はだれもいません。こんな状態が続くなら、私は会社を辞めます。

以前のプロダクトマネージャーは心の優しいやつだった。
自分の考えを持っていたが、引き際をわきまえていた。
ボスが自分の考えを彼にぶつけると、すぐさま退いてしまったので、彼の素晴らしいアイデアが日の目を見ることは少なかったが。
それでも彼はいつもそこにいた。次のプロジェクトにまたいつでも参加する心づもりで。

 

ボスはもう限界だった。
最近の出来事をひと通り振り返った後、フランクスト博士のところへ行き、自分の思いを伝えた。

--博士、もとの部下たちに戻してください。私が期待したような結果にはならなかったのです。

--でもあなたは、彼らは弱すぎると言わなかったかい?

--ええ、言いました。でも、改めてわかったことがあって、自分の間違いを正したいのです。やっぱり「普通」の人がいい。

--何がいけなかったのかな?もう一度、弱い部下たちと一緒に仕事をしたくなったってわけかい?

-- ちょっと違います。ええと、「鎖の強さはその輪の一番弱いところに左右される」って言いますが、鎖の輪の弱いところとは、実はこの私だったことがわかった のです。私のクローンにはもう我慢できない!お願いですから、もとの部下に戻してください。私が彼らをもっと頼りにし、もっとうまく扱えるようになれば、 私たちが立てた目標に到達できるのだと、ようやく気がつきました。

 

4人を元に戻し終えた博士は、ボスと固い握手を交わし、小さな封筒を手渡した。
「翌朝読むように」と言われたボスが、翌朝封を開けると、手書きの手紙が入っていた。

「リー ダーの多くは、自分のクローンを増やして部下にしたいと夢見ている。だがあなたも気づいたように、そんなことをしても本当の問題は解決にはならない。私たちが想像力を高めるには、多様性が必要だ。レベルやプロフィールが異なる役職を、全部埋める必要があるからね。重要なのは、みんなが均一なことではなく、 みんながそれぞれの役職に適していること、そしてみんながうまく組織され、やる気があり、よく管理されていることだ。こうしたことをうまくやるために変えるべき人間は、そう、私たち自身なんだよ」

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以上

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